「夫の暴力が原因で離婚になったのだから、慰謝料をもらいたい」
「浮気をした夫に慰謝料を請求したい」
など、慰謝料についてのご相談は多いです。
慰謝料とは
慰謝料とは、相手の暴力や浮気などの不法行為によって「精神的苦痛」を受けたことに対する損害賠償金です。
離婚における慰謝料には2種類あります。
① 婚姻期間中の個別の不法行為(たとえば、暴力、不貞行為など)から生じる精神的苦痛の慰謝料(離婚原因慰謝料)
② 相手の行為により離婚せざるを得なくなったことによる慰謝料(離婚自体慰謝料)
①と②は別に請求することができますが、実際の離婚訴訟や離婚調停においては、ほとんどの場合、②の慰謝料の請求であると思われます。
離婚慰謝料を請求できる場合
どのような場合に配偶者に対する離婚慰謝料は認められるのでしょうか?
離婚に至る経緯で、相手から苦痛を受けた場合に請求したいと考える方が多いですが、苦痛を感じれば必ず慰謝料が認められるわけではありません。
慰謝料が認められるためには、相手方の行為が違法であることが必要です。
離婚の原因が相手の違法な行為ではない場合には、慰謝料は認められません。
慰謝料を請求できる違法行為の例としては、DVや浮気(不貞行為)などがあります。
性格の不一致や価値観の違いは、通常、違法行為とはいえず、慰謝料請求できません。
離婚の際の慰謝料は、夫から妻に支払うものというイメージがあるかもしれませんが、夫が不法行為をしていない場合、夫は慰謝料を支払う必要はありません。
夫から妻への慰謝料請求が認められる場合もあります。妻が不法行為(たとえば不貞行為)をして夫に精神的苦痛を与えた場合は、夫は妻に慰謝料を請求できるのです。
慰謝料を請求できるケース
◎ 不貞行為(不倫・浮気)
自由な意思で配偶者以外の人と性的関係を持った場合です。
証拠として、ラブホテルに一緒に出入りする写真・動画、LINE等のやり取り、ホテルの領収書などが挙げられます。
◎ DV(家庭内暴力)
証拠として、暴言や暴力の様子がわかる録音・録画、けが等の写真(傷の部位、日時がわかるように撮影)、診断書等が挙げられます。
◎ 悪意の遺棄
理由なく生活費を渡さないなど。
慰謝料が認められないケース
× 単なる性格の不一致、価値観の違い
× けんかの際の多少の暴言
けんかの際に感情的になって一時的に発した言葉は、精神的虐待・モラハラにはあたらない可能性があります。
× 婚姻関係がすでに破綻していた場合
不倫の時点で、すでに婚姻関係が破綻していた場合、慰謝料請求は難しいと考えられます。
× 証拠がない場合
配偶者が不貞行為などの不法行為はないと主張している場合、裁判では、慰謝料を請求する側が配偶者の不法行為を証明する必要があります。証拠がない場合は証明が困難であり、裁判では、慰謝料請求が認められない可能性が高いと考えられます。
証拠が重要
たとえば、相手が不貞行為やDV、モラハラを認めない場合、相手の不貞行為やDV、モラハラがあったことについて、慰謝料を請求する側が証明する必要があります。
証明するためには証拠が重要です。
証拠は、離婚を切り出す前や別居前に集めておくことが重要です。
慰謝料の金額
慰謝料はどれくらい請求できるのでしょうか?
慰謝料の額をいくらにするか、法律には書かれていません。
慰謝料の額を算定するときに考慮される要素としては、
・離婚原因となった違法行為(有責行為)の内容や程度
・婚姻期間
・精神的苦痛の程度(心身の健康を害したなど)
・請求者側の責任の有無や程度
といったものが挙げられます。このうち、有責行為の内容・程度が最も重要な要素となります。
慰謝料の金額は、事情により変動します。
裁判所で認められる慰謝料は、50万円~300万円程度であることが多いようです。
上記の相場はあくまで裁判所の判決で認められている慰謝料の額に関する相場です。
協議(話し合い)の中で決めるのであれば、慰謝料の額は、夫婦双方が合意した金額となります。
まとめ
離婚の際の慰謝料について、
・慰謝料請求が認められるか・認められないか
・どれくらい請求できるか
ということについては、それぞれの事案で検討が必要です。
証拠の有無によって影響を受けますし、すぐに離婚をしたいと考えている側が多く払うケースもあります。
適正な慰謝料を受け取るためにも、離婚を切り出す前に、弁護士にご相談されることをおすすめします。