裁判離婚

裁判離婚とは

裁判離婚は、裁判官が言い渡す判決によって成立する離婚です。

裁判(判決)で離婚が認められるには、法律で定められている離婚事由(離婚原因)があることが必要です。

法律上の離婚事由があれば、一方が離婚に反対していても裁判官が離婚を認める判決を言い渡すと離婚が成立します。なお、裁判の途中で、話し合い(和解)により離婚を成立させることもできます。

なお、離婚について、いきなり裁判(訴訟)を起こすことはできず、まず調停を行う必要があります(調停前置主義)。家庭内の問題は、裁判よりも話し合いで解決することが望ましいと考えられているからです。

 

協議、調停との違い

離婚の種類には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚があります。

「離婚の条件に納得できない」など調停で離婚の話し合いがまとまらなかった場合、離婚するには裁判をする方法があります。

協議離婚、調停離婚との大きな違いは、裁判離婚には、法律で定められた離婚事由が必要なことです。

また、夫婦間で離婚の合意ができない場合でも、法律で定められている条件(離婚事由)を満たしていれば、裁判所の判決により離婚が成立することも協議離婚、調停離婚と大きく違う点です。

裁判離婚のデメリットとして、協議離婚や調停離婚と比べて、時間がかかること、費用面や精神面での負担が大きくなること、プライバシーが守られないことなどが挙げられます。離婚調停は非公開の手続きですが、裁判は原則として公開されますので、夫婦のプライバシーが公になることを受け入れる必要があります。

 

離婚裁判(離婚訴訟)

離婚裁判(離婚訴訟)には強い気持ちが必要になります。離婚裁判で結論が出るまでの期間は、一般的に、約6か月から、長くなると1年から2年程の時間がかかることもあり、協議や調停を含めると長期に及び、精神的な負担も大きくなります。

裁判所の判決に不服がある当事者が控訴するとさらに裁判が続きます。

裁判では、自分の言い分を主張するとともに、証拠を提出します。裁判で有利な判決を勝ち取るには、法律知識が必要不可欠です。裁判をするには弁護士に依頼するのが適切です。弁護士は、離婚を知識面でサポートすることはもちろんのこと、長丁場を戦い抜くあなたの精神的な負担を軽減してくれる方がふさわしいでしょう。

離婚裁判が始まった後も、夫婦双方が合意することによって和解離婚という形で離婚が成立することもあります。

 

法律で定められている離婚事由

民法で定められている離婚原因・事由は以下のとおりです。

 

(1) 不貞行為

不貞行為とは、自由な意思のもとで配偶者以外の人と性的関係を結ぶこと、いわゆる浮気や不倫です。一時的なものか継続しているか、愛情の有無は問われませんので、一時的な短期間の性的関係も不貞行為になり得ます。

相手方が不貞行為を認めていない場合、相手方の不貞行為を証明する必要があります。

 

(2) 悪意の遺棄

悪意の遺棄とは、同居・協力・扶助(ふじょ)といった夫婦間の義務を正当な理由なく果たさないことです。

理由もなく配偶者や子どもを放置して別居することや収入がありながら生活費を支払わないような場合です。離婚原因としての遺棄が認められるには、遺棄の状態がある程度の期間継続していることが必要です。

別居など、形式的には同居協力扶助義務に違反するような行為があっても、正当な理由や合意に基づく場合は、悪意の遺棄にはあたりません。たとえば、病気療養や介護を理由とする別居、出張等を理由とする別居、配偶者の有責行為(DVなど)をきっかけとする別居は、正当な理由に基づくといえます。

 

(3) 3年以上の生死不明

生死不明とは、配偶者からの連絡が途絶えて、生存・死亡のいずれも不明な状態が継続していることです。

なお、配偶者が7年以上生死不明である場合、失踪宣告制度により、法律で死亡したものとみなされ、婚姻関係は配偶者の死亡により終了します。

 

(4) 回復の見込みがない強度の精神病

配偶者が精神病になったというだけでは認められず、医師の診断(鑑定結果)、離婚後の配偶者の療養・生活などを含めて裁判官が離婚を認めるか厳格に判断する傾向にあります。

なお、令和6年の民法改正により、この条項は削除されることになりました。

 

(5) その他の婚姻を継続し難い重大な事由

婚姻を継続し難い重大な事由とは、一般に、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態をいいます。

別居、性格の不一致、配偶者の親族との不和、多額の借金、過度の宗教活動、暴力(DV)、モラハラ・精神的虐待、浪費、犯罪行為、性交渉の拒否・性交不能などがあることを理由に離婚を求める場合、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない場合に該当するか、裁判官が判断します。

性格の不一致については、どうしても多少の不一致はありますので、性格の不一致だけで離婚事由になるのはよほどの場合でしょう。

通常、多くのケースでは、いくつかの要素が重なって婚姻を継続し難い重大な事由にあたると判断されることになります。

 

なお、(1)から(4)の具体的な離婚原因がある場合でも、裁判所は、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときには、離婚の請求を認めないとすることができます。

 

有責配偶者からの離婚請求

夫婦間の婚姻共同生活を円満に維持・継続させる義務を怠った有責配偶者からの離婚請求については、婚姻関係が破綻している場合でも離婚が認められない場合があります。

有責配偶者からの離婚請求については、次の要件を検討します。

 

① 相当長期間の別居
別居期間が10年を超えれば、通常、相当長期間の別居にあたるといえます。別居期間が10年に満たない場合、特に、婚姻期間が数十年に及んでいる夫婦の場合には、どの程度の別居期間があれば有責配偶者からの離婚請求が認められるかは、事案によって異なります。

② 未成熟子の不存在
未成熟子とは、子どもが経済的、社会的に自立して生活することができない状態にあることをいいます。未成年とは異なりますので、成年(18歳以上)になっていても未成熟子にあたる場合があります。
未成熟子がいる場合でも、有責配偶者の離婚請求が認められる場合があります。

③ 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれるなど離婚請求を認めることが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がないこと 次のような事情が考慮されます。
・配偶者の年齢、健康状態
・配偶者の収入、資産
・別居期間中の婚姻費用(生活費)の支払状況
・離婚の際の慰謝料、財産分与

 

裁判離婚の流れ

離婚裁判(訴訟)を行うには、下記の準備が必要です。

なお、離婚するかどうかだけでなく、親権者、養育費、財産分与、慰謝料など、離婚とともに決めたいことについても申し立てることができます。

 

1) 訴状

訴状(2部)を作成し、家庭裁判所に提出します。 訴状には、民法の定める離婚事由などを記載します。

 

2) 証拠

自分の主張を認めてもらい、有利な判決を得るには、自分の主張を裏付ける証拠等を提出する必要があります。

 

3) 調停不成立証明書

訴状とともに提出します。

日本では、離婚裁判をする前に調停を経ていなければならないという「調停前置主義」が採られています。離婚については、いきなり公開の法廷で行われる裁判で争わせることは望ましくないと考えられており、まずは当事者の話し合いにより解決する手続である調停を行うことが求められています。調停前置主義があるため、調停が不成立になった証明書を提出します。

 

4) 戸籍謄本

夫婦の戸籍謄本を訴状とともに裁判所に提出します。

 

5) 費用

費用として収入印紙を裁判所に納めます。金額は請求の内容によって異なります。

また、裁判所に郵便切手を納めます。金額等については、裁判所に確認が必要です。

 

離婚裁判では、判決により決着がつきます。判決に不服がある場合は上級裁判所に不服申立て(高等裁判所に控訴・最高裁判所に上告)することができます。自分の希望どおりの結論でなくても、判決に従わなければなりません。なお、最高裁判所は法律の解釈をする場ですので、浮気などの事実について争えるのは高等裁判所までです。

有利な内容の判決を得るためには、自分に有利な主張や証拠を適切に提出することが必要です。訴えられた場合も、適切な反論と証拠の提出が必要です。

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