浮気・不倫の慰謝料|相場や請求できるケース、請求方法などを弁護士が解説

配偶者が不倫をした場合、配偶者と不倫相手の双方に対して慰謝料を請求することができます。

以下では、主に、不倫相手に対する慰謝料請求について説明します。

 

不倫慰謝料請求の基礎知識

○不倫相手に慰謝料請求できるケース

配偶者が不倫をした場合、その不倫相手に慰謝料を請求することができます。

不倫相手への慰謝料請求が認められるためには、以下の条件を満たしている必要があります。

① 不貞行為の存在
② 不倫相手に故意・過失がある
③ 不倫による結果・損害の発生

 

① 不貞行為の存在について
配偶者の不倫・浮気を理由に慰謝料請求が認められるのは、不貞行為があった場合です。
不貞行為とは、一般的には、自由な意思に基づいて配偶者以外の人と肉体関係を持つことをいいます。

・愛情表現を含んだ親密なメール・LINEをやり取りすることは不貞行為(不法行為)になるでしょうか?
LINEやメールの内容、その他の証拠から不貞行為があったと推認されて、慰謝料請求が認められる可能性があります。
親密なメール等のやり取り自体が損害賠償責任を生じさせるかという点について、裁判例では肯定事例と否定事例があります。

・手をつないで歩くことは不貞行為(不法行為)となるでしょうか?
手をつなぐ行為そのものが不貞行為にあたらないとしても、手をつないでいる状況等によって不貞行為があったと推認されて、慰謝料請求が認められる場合があります。

 

② 不倫相手に故意・過失がある
「故意」とは、不倫の時点で相手が既婚者であることを知っていたことを指します。
「過失」とは、相手が結婚していることを知ることができたのに不注意で知らなかったことを指します。
独身者であると聞いていたが、既婚者であることに気付く余地があった場合は過失があるといえます。

 

③ 不倫による結果・損害の発生
慰謝料請求が認められるためには、加害行為により損害が発生したことが必要です。不倫慰謝料請求の場合、不倫により夫婦関係が侵害・破壊され、精神的苦痛を受けたことが必要です。
たとえば、不倫開始前は円満な夫婦関係であったのが、不倫後に別居や離婚に至った場合などです。
不倫の結果、夫婦関係が破綻しなかったとしても、夫婦関係に悪影響を及ぼした場合は慰謝料請求が認められる可能性があります。
不倫の開始時に、既に夫婦関係が破綻していた場合は、不倫相手への慰謝料請求は認められません。
なお、夫婦仲がうまくいっていないと不倫相手が聞いていた場合、不倫相手がそのような話を信用していたとしても、裁判では不倫相手のそのような弁解は認められないことが多いでしょう。

 

○慰謝料を請求できる相手

慰謝料は不倫をした配偶者とその不倫相手の双方に請求することができます。不倫相手に対してだけ慰謝料を請求することもできます。なお、不貞行為は、民法で定められている離婚事由であり、離婚原因にもなります。

あなたが配偶者と離婚しない場合、不倫相手だけに請求することが一般的と思われます。

不倫相手にのみ慰謝料を請求する場合、不倫相手から配偶者に対し、配偶者が負担すべき金額を請求されるおそれがあります。不倫の慰謝料を支払う責任は配偶者と不倫相手の双方にあることから、不倫相手が慰謝料を支払った場合、不倫相手は配偶者に対して、支払った慰謝料のうち配偶者が負担すべき部分について支払うよう請求することができるからです。法律用語では、「求償権」といいます。

不倫相手から配偶者へ求償権を行使されないように、慰謝料についての示談書を作成する際、不倫相手の配偶者に対する求償権を放棄するとの内容を記載するようにします。

 

不倫慰謝料の相場

慰謝料は精神的苦痛に対する賠償金です。

精神的苦痛を金銭的に評価することは困難ですが、裁判例を参考にすると、多くの事案が数十万円~300万円の範囲内にあるようです。

裁判例を参考にすると、大まかな目安は次のとおりです。

離婚に至ったケース   150万円~300万円
離婚しなかったケース  数十万円~200万円

上記の金額は、あくまでも大まかな傾向であり、裁判では様々な事情を考慮して慰謝料額が決められます。慰謝料額の算定において考慮される要素には次のものがあります。

 

○慰謝料額を左右する要素

・不倫の期間の長さ
・不倫の回数
・離婚したかどうか
・婚姻期間の長さ
・未成年の子どもの有無  など

 

○慰謝料が増額されやすいケース

・不倫により離婚に至った
不倫の結果、離婚に至った場合は、そうでない場合と比べて、精神的苦痛が大きいと判断されて、慰謝料額が高額となります。
・不倫期間が長い
・不貞行為の回数が多い
・婚姻期間が長い
・未成年の子どもがいる など

 

○慰謝料が低めの金額となりやすいケース

・不倫の期間が短い
・不貞行為の回数が少ない
・既婚者でないと思っていた
既婚者であることを知っていた場合(=故意が認められる場合)と既婚者であると不注意により知らなかった場合(=過失があるが、故意がない場合)とを比べると、過失があるが故意がない場合では慰謝料の減額が認められる可能性があります。
・不貞行為開始時に夫婦関係が円満でなかった
・離婚や別居に至らなかった場合など

慰謝料の額は、不貞行為の内容や夫婦関係の状況によって異なります。

 

不倫慰謝料請求の手順

○証拠集め

慰謝料を不倫相手から支払ってもらうためには、不貞行為の証拠と不倫相手に関する証拠が重要です。

証拠がなければ、不倫相手は不貞行為はなかったと否定する可能性が高く、慰謝料を支払ってもらうことができなくなります。裁判でも証拠がなければ、慰謝料請求は認められません。また、配偶者の不倫相手が誰かわからなければ、慰謝料を請求することはできません。

 

〈証拠の種類〉

不貞行為の証拠となり得るものとしては、次のものがあります。

・肉体関係があったとわかる内容のメール・LINE等
・ラブホテルや不倫相手の自宅に出入りしている写真や動画
・ラブホテルや旅行先のホテルの領収証など

 

〈証拠集めの方法〉

スマホでの配偶者と不倫相手のやり取りのスクリーンショットを取るなど、自分で集められる証拠もありますが、ご自分で集めるのが困難であり、探偵・調査会社に依頼する方もいます。

また、配偶者や不倫相手が不倫の事実を認めた場合には、録音した音声データや不倫の事実を認めた念書などの文書を証拠として提出することも考えられます。

 

○弁護士への相談

複数の証拠が合わさることで不倫の事実を明らかにすることができる場合もあります。慰謝料請求が認められる可能性があるのか不安な場合は弁護士に相談するのがよいでしょう。

 

○不倫相手との交渉

不倫の証拠を集め、不倫相手が特定できたら、多くのケースではまず交渉を行います。

交渉は、書面による交渉と口頭での交渉があります。一般的には、内容証明郵便を送ることが多いです。

書面による交渉は、検討した主張を明確に伝えることができますが、不倫相手に考える時間を与えることになるという側面もあります。内容証明郵便は、弁護士に作成してもらうこともできますし、弁護士名で送付することもあります。内容証明郵便、とくに弁護士名で内容証明郵便を送付した場合、請求者の本気度が伝わったり、受け取った側が緊張感を持つことで、不倫相手が交渉に応じる可能性があります。

口頭での交渉は、対面であれ、電話であれ、とっさの判断が必要な場面もあり、また、感情的になってしまうこともありますので、不適切な対応をしてしまうリスクがあります。冷静に交渉することが大切です。

不倫相手との話し合いがまとまったら、示談書を作成します。口約束だけでは、後々、「そんな約束はしていない」などと支払を拒否されるおそれがありますので、合意した内容を書面にして残しておくことが大切です。

示談書は自分で作成することもできますが、形式に不備があったり、内容が不明確であったりすると、証拠としての効力がないという事態も起こり得ます。示談書の作成に不安があれば弁護士に作成を依頼すると良いでしょう。

また、書面を作成した場合であっても、不倫相手が約束したとおりに慰謝料を支払ってくれるとは限りません。支払が滞った場合に備えて、公証役場で公正証書を作成するのが良いでしょう。不倫相手が慰謝料を支払わなかった時に給料や財産を差し押さえる強制執行をする効力を付与した公正証書(強制執行認諾文言が記載された公正証書)を作成しておけば、裁判を経ずに強制執行することが可能となります。

交渉にあたっては、不適切な対応、例えば、感情的になって恐喝的な言動をしないように十分に注意し、不倫相手が支払いを拒否する場合には、無理に自分自身での交渉を継続せず、調停または訴訟による請求を検討することも必要です。

 

○調停

不倫相手が話し合いに応じない場合、不倫相手との直接交渉による負担・ストレスを軽減したい場合には、調停を申し立てる方法もあります。

調停は、裁判所で話し合う手続です。裁判所の選任した調停委員を介して話し合いを行いますので、相手方と顔を合わせることなく話し合いを行うことができます。

調停が成立すると、裁判所が調停調書を作成します。不倫相手が慰謝料の支払を怠った場合、調停調書を使用して相手方の財産を押さえる強制執行を行うことができます。

調停では調停委員を介して話し合いをしますが、裁判所や調停委員が積極的に事実を解明したり、証拠を集めてくれるわけではありません。当事者として、調停委員に対して、主張し、説明することが求められます。口頭での説明では正確に伝わらないこともあります。事実関係や言い分を調停委員に正確に伝えて理解してもらうために、事実等を整理して適切に主張し、証拠を提出することが重要です。弁護士を代理人とすることで、弁護士が調停期日に出席し、適切な主張をすることができますし、ご自身の負担も軽減され、感情的にならずに話し合うこともできるでしょう。

不倫相手が調停での話し合いでも支払に応じない場合がありますし、そもそも不倫相手が調停を欠席するという場合もあります。そのような場合は、訴訟(裁判)を提起することになります。

なお、有力な証拠がある場合では、不倫相手が交渉で支払を拒否した場合、調停を挟まずに訴訟を提起することが多いと思われます。

 

○訴訟

話し合いがまとまらない場合、裁判(訴訟)を行うことになります。

慰謝料請求については、調停をせずに、訴訟を提起することもできます。

裁判では、証拠が重要です。不倫の有力な証拠を提出し、不貞行為を主張・立証していきます。

裁判の途中で、和解により解決するケースもあります。和解が成立した場合、裁判所が和解調書を作成します。不倫相手が慰謝料の支払を怠った場合、和解調書を使って相手方の財産を押さえる強制執行を行うことができます。

裁判の途中で和解しない場合、裁判官が判決を言い渡します。

判決となった場合、自分の希望した内容とは異なる結論となったとしても、判決に従わなければなりません。

訴状などの主張を記載した書面の作成には、法律知識が不可欠です。相手方への反論や証拠の提出など、裁判を進めて行くにも法的知識やノウハウが必要です。不倫が事実であったとしても、判決を書く裁判官は第三者ですので、裁判官は当事者から提出された主張と証拠により不貞行為の有無を判断します。第三者である裁判官から見て、不貞行為があったと判断できる主張と証拠を提出することが求められます。

 

不倫慰謝料請求の注意点

慰謝料を請求する際の注意点があります。

 

○時効

慰謝料を請求する権利は、ある期間が経過すると時効になり、請求が認められないことがあります。

具体的には、次の期間が経過すると慰謝料を請求することができなくなります。

① 不倫とその不倫相手を知った日から3年
不倫相手を知った日について、その住所と氏名を知った時点とする裁判例があります。

② 不貞行為があった時から20年

慰謝料請求を検討している場合、時効が完成する前に適切な対応をとることが必要です。

 

○証拠の違法収集とリスク

証拠を集める際には、違法な方法で証拠を収集しないように注意しましょう。

例:不倫相手の家に無断で入る。自宅の敷地に無断で入ることもやめましょう。
スマホ、PC、メール、LINE等に不正にアクセス・ログインする。など

違法に収集した証拠については、裁判で証拠から排除される可能性があります。証拠から排除された結果、他の証拠で不貞行為を証明できなければ、慰謝料請求が認められないことになります。

また、相手から慰謝料請求されるおそれがあります。

他人のPCやスマホに不正にアクセス等した場合、刑事罰の対象となる可能性があります。

 

○精神的苦痛の程度の判断要素

精神的な苦痛がどの程度かということを客観的に測定することは困難です。

人によって精神的な苦痛の感じ方は異なりますし、被害者が傷つきやすい人であった場合に慰謝料額が高額になるとすれば、公平ではないと考えられます。

精神的苦痛の程度については、次のような事情を考慮して判断されます。

・不貞行為の期間
・不貞行為の回数
・不貞行為による離婚・別居の有無
・夫婦の婚姻期間
・不貞行為による妊娠・出産の有無など

不貞行為によってうつ病などの精神疾患を発症した場合、慰謝料が増額される場合もあります。不眠症やうつ病などの診断を受けた場合、診断書を取得しましょう。

 

不倫慰謝料請求に関するよくある質問

不倫の慰謝料請求は自分でもできますか?

法律知識、証拠、気力があれば、ご自分で慰謝料請求をすることは可能です。

ただ、精神的ショックを受けた状態で、不倫相手と直接やり取りすることには精神的苦痛・ストレスが伴うことが多いと思われます。

弁護士を代理人とすることで、直接交渉による精神的な負担を軽減し、冷静に言い分を伝えることができるでしょう。

不倫相手との直接のやり取りが苦痛だと感じたら、弁護士に相談することをお勧めします。

 

不倫の証拠がない場合でも慰謝料請求はできますか?

不倫相手が不倫を認めている場合、証拠がなくても不倫相手が慰謝料を支払うことはあります。

不倫相手が不倫を認めない場合、不貞行為を証明する証拠が重要となります。

訴訟になった場合、証拠がなければ、不貞行為があったとは認定されず、慰謝料請求も認められません。慰謝料を請求する側が、自分の配偶者と不倫相手との間で不貞行為があったことを証明する必要があり、証明できない場合は請求が認められないという結果(判決)になります。

調停の場合も、証拠がないと、調停委員としても不貞行為があったことを前提にして相手方と話をすることはできませんので、不貞行為を証明する証拠の存在は重要です。

配偶者の不倫に気付いた場合は、発見した証拠を保存しましょう。

言い逃れができないくらいの明確な証拠を残してから話し合いをすることが大切です。そうでなければ、言い逃れをされるだけでなく、他の証拠を消されてしまうことがあります。配偶者にやり直したい気持ちがある場合には、不倫相手に対する慰謝料請求の証拠を、自主的に提供してくれる場合もありえます。有力な証拠がない場合、調査会社に依頼することも検討することになりますが、調査会社に費用を支払う必要があります。どのような証拠をどの程度収集すればよいか、早い段階で弁護士に相談するのが良いでしょう。

 

不倫相手が既婚者の場合、慰謝料請求はできますか?

配偶者(B)の不倫相手(X)が既婚者の場合も、不倫相手(X)への慰謝料請求は可能です。

ただし、不倫相手(X)の配偶者(Y)があなた(A)の配偶者(B)に慰謝料請求をしてくる可能性がありますので、対応について慎重に検討する必要があります。

あなた(A)と配偶者(B)、不倫相手(X)とその配偶者(Y)、2組とも離婚する場合には、あなた(A)が不倫相手(X)から慰謝料を支払ってもらい、不倫相手の配偶者(Y)があなたの配偶者(B)から慰謝料の支払いを受けることになります。

2組とも離婚せず婚姻関係を続ける場合、双方の慰謝料を相殺することで解決することも考えられます。

事情によっては、不倫相手の配偶者(Y)からの請求の方が高額となる可能性もあります。たとえば、相手夫婦(XとY)の婚姻期間の方が長い、自分たちの夫婦関係(AとB)は不倫前から破綻に近い状態であった、相手夫婦(XとY)には未成年の子がいるが自分たち(AとB)には未成年の子どもはいない、などといった事情がある場合、支払う金額の方が大きくなる可能性があります。

あなたたち夫婦(AとB)が離婚せず、不倫相手の夫婦(XとY)のみが離婚した場合、不倫により離婚に至ったという事情が慰謝料の増額要素として考慮される結果、不倫相手の配偶者(Y)からあなたの配偶者(B)に請求される慰謝料の方が高額になる可能性もあります。

 

慰謝料請求にかかる費用はどのくらいですか?

不倫相手への慰謝料請求は、示談交渉で解決する場合と裁判に進む場合で費用が異なります。

不倫相手への慰謝料請求にかかる費用として、大きく、①裁判費用(示談交渉では解決せず、裁判(訴訟)をする場合にかかる費用)、②弁護士費用(弁護士に依頼する場合にかかる費用)に分けられます。

①裁判費用
裁判費用として次の費用が発生します。

・裁判所に納める手数料(収入印紙代):請求する慰謝料の金額によって異なります。
例:200万円請求する場合、1万5000円
  300万円請求する場合、2万円
  500万円請求する場合、3万円

・郵便切手代:裁判所によって異なります。訴訟を提起した際に納めた郵便切手で使用しなかった分は訴訟終了後に返還されますし、不足した場合は追加納付が必要になります。

②弁護士費用
・相談料:5,000円~(無料相談を行っている法律事務所もある)
・着手金:弁護士に依頼する際にかかる費用。結果の成功・不成功にかかわらず発生する費用。
・報酬金:依頼した案件の終了時に発生する費用。解決内容に応じて金額が異なることがある(成功報酬)。

 

まとめ

不倫相手への慰謝料請求を行うには、交渉、調停、訴訟、いずれの手続であっても、法的知識、ノウハウと冷静な対応が必要となります。

配偶者の不倫を知り、精神的ショックを受けている状態で、冷静な対応や判断ができない場合もあるでしょう。自分で対応した際に感情的な言動をしてしまい、辛い思いをしているあなたが不利な状況になることは避けなければなりません。

不倫相手への慰謝料請求では、証拠が重要です。証拠がなければ、不倫相手は不貞行為を認めないこともありますし、訴訟となっても慰謝料請求は認められないでしょう。

不倫相手と交渉することに不安やストレスを感じる方もおられるでしょう。

慰謝料を請求する際も様々な事項を検討し、準備する必要があります。早期解決のためには、早い段階から弁護士に相談するのが良いでしょう。法律知識に基づくアドバイスだけでなく、客観的な立場から冷静なアドバイスをしてくれる、相談相手にもなってくれるでしょう。

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