「離婚したら厚生年金ってどうなるの?」
遠い近いにかかわらず、いずれ訪れる老後の生活についても考える必要があります。
婚姻期間が長期に及んでいる場合は、近い将来のこととして、年金がいくらになるか、関心がある方もいるでしょう。
年金の種類
公的年金には、国民年金と厚生年金(以下では、旧共済年金を含めて厚生年金としてお話します。)があります。
国民年金(基礎年金)は各人が加入していますので、それぞれが受給します。
離婚時に検討が必要なのは、厚生年金です。
夫が会社員として働き、妻は家事に専念するといったケースを考えてみましょう。
厚生年金は会社等に勤務する夫が加入者となり、妻は厚生年金の受給権をもっていません。
夫が働いて、妻は家事に専念する場合、妻が受け取ることができる厚生年金は少額(結婚前の厚生年金加入分などだけ)であるという場合が少なくありません。
年金分割とは
婚姻期間中に納めてきた厚生年金保険料は夫婦が共同して負担してきたと考えられるのに、離婚した夫婦間で(特に、夫が会社員として働き、妻が家事に専念する夫婦間で)、老後にもらえる年金額に差が生じる不平等を是正する必要があります。
その不平等を是正するのが年金分割です。
たとえば、妻が専業主婦で夫が会社員だった場合、夫の厚生年金の保険料納付実績を分割することができます。
分割割合の上限は2分の1(50%)です。
何も手続きをとらなければ、厚生年金の加入者でなかった配偶者は、離婚した後、国民年金しかもらえないことになってしまいます。
離婚の際は、年金分割についても忘れずに検討しましょう。
年金分割の種類
離婚時年金分割には、合意分割と3号分割があります。
3号分割の方が手続き的には簡単ですが、注意が必要です。
3号分割については、請求手続をとれば自動的に2分の1の分割を受けることができますが、3号分割で分割されるのは、平成20年4月以降の国民年金第3号被保険者(会社員や公務員の扶養配偶者。専業主婦、パート等)であった期間中の厚生年金保険料の納付実績だけになります。
合意分割の場合は、婚姻期間中全体の厚生年金保険料の納付実績が分割されます。3号分割とは異なり、平成20年より前の部分も分割の対象期間に含まれます。
合意分割での分割割合の決め方
まず、年金事務所等に請求して「年金分割のための情報通知書」を入手します。
話し合いによる場合
合意分割の場合、分割割合は、話し合いによって決めます。
なお、年金は老後の生活保障であることから、家庭裁判所で決めることになった場合、基本的に分割割合は2分の1と定められます。
話し合いで合意ができたら、合意した分割割合を明らかにすることができる書面(年金分割の合意書)を作成し、この年金分割の合意書と戸籍謄本等の書類を年金事務所に持参して年金分割請求の手続を行います。原則として、夫婦そろって年金事務所に行く必要があります。
裁判所の手続(審判、調停)による場合
離婚調停を行っている場合は、年金分割についても一緒に話し合って決めることが多いです。
離婚の際に年金分割について話し合いをしなかった場合、離婚後に年金分割の割合を定める調停を申し立てることができます。
審判や調停で分割割合が決まったら、当事者のいずれか一方から、年金事務所等において、年金分割の請求手続を行う必要があります。家庭裁判所の審判や調停に基づいて自動的に分割されるわけではありません。
年金分割の請求に際して、審判書謄本(調停の場合は調停調書謄本)及び確定証明書、戸籍謄本などの提出を求められます。詳しくは年金事務所等に確認するのがよいでしょう。
離婚から2年を経過すると年金分割の請求ができなくなりますので、注意が必要です。
まとめ
年金の問題は離婚後の生活設計に影響を及ぼす問題です。
年金分割の請求には期限がありますので、期限を過ぎることがないように注意が必要です。 不安や疑問を感じた場合は、弁護士に相談するのが良いでしょう。