離婚したいと思っても、いつ、どのように離婚の話をしたらよいのか迷う方も多いと思います。
配偶者によるモラハラや暴力があったり、配偶者が話を聞いてくれないなど、離婚を切り出しても、話し合いにならず、相手が逆上することもあるのではないかと不安に思われることもあるでしょう。
離婚は人生の大きな決断ですので、慎重に準備を進めることが大切です。
以下では、離婚を考えている人が、離婚の話をする前に考えておくべきこと、離婚の切り出し方や注意点について説明しています。
離婚の話をする前に考えておくべきこと
自分の気持ちを整理する
離婚を切り出す前に、まず、ご自分の気持ちを確かめてください。
〈離婚したい理由を明確にする〉
離婚したいと思った理由があるはずです。離婚後は生活に大きな変化・影響が生じます。離婚したことを後悔しないために、離婚したいと思った理由を確認することが大切です。配偶者とこれ以上一緒にいることはできないと考えた理由を、整理しておく必要があります。
その理由について、これ以上我慢できないか、改善の余地がないか、夫婦で協力することはできないか、離婚以外の解決方法はないか、などを考え、ご自分の気持ちを整理しましょう。
離婚したいと考えた理由が相手の不倫、暴力、モラハラ等である場合、離婚を切り出す前に、できる限り証拠を集めておくようにしましょう。
離婚を切り出すことをためらっている方は、ためらっている理由も確認しましょう。解決の方法はないか、協力してくれる人はいないか、行政等の支援は受けられるか、などを確認してみましょう。
子どもがいる場合には、離婚による子どもへの影響を考えて、自分の意思を確かめることも必要でしょう。
〈離婚後の生活をイメージする〉
離婚後の生活をイメージすることはとても大切です。
離婚を考えたときは、悲しみ、怒り、恐怖、不安などの感情があふれ、将来のことを考えることが難しいかもしれません。しかし、離婚は生活に大きな変化をもたらします。感情的に判断するのではなく、離婚を切り出す前に、まずは冷静に状況を把握することが大切です。
離婚をしたいと思うのは、自分らしく生きて幸せな人生を送りたいからではないでしょうか。何が幸せな人生かは人それぞれですが、生活が安定していることは大切です。
離婚後の生活設計は、とても重要です。お金のことを後回しにしてはいけません。離婚後の生活における支出と収入を具体的に見積もってみましょう。生活をしていくうえで必要な金額、離婚により得られる財産(財産分与、慰謝料、養育費、年金分割)、働くことによる収入の見通しを立て、離婚後の生活の準備をすることが大切です。
お子さんがいる場合には、お子さんの生活環境についても考える必要があります。
離婚後の住居をどうするかも考える必要があるでしょう。
一人で悩まず、悩みや不安があれば、専門家に相談することをおすすめします。
相手との関係性を考える
離婚したい理由を確認し、離婚後の生活をイメージした後も、離婚の決意が変わらない場合、配偶者との話し合いをどのように進めるか検討する必要があります。
〈相手の性格や状況を考える〉
話し合いを始める段階で選べる離婚の手続きとして、①協議と②調停があります。
相手の性格や状況を考えて、離婚や離婚条件について、配偶者と考えを一致させることができそうであり、感情的にならずに話し合うことができそうであれば、夫婦で離婚協議することも選択肢となります。
相手の性格や状況等を考えると、話し合いができそうでない場合、双方の考えている離婚条件が大きく異なる場合には、弁護士に依頼して、弁護士を通じて相手との協議を行うこと、離婚調停の申立てをすることを検討することになります。
なお、親族などの第三者を間に入れて話し合うこともありますが、親や兄弟の場合は、身近であるだけに、感情的になって話し合いが進まないケースもありますし、客観的な判断ができないこともあると思われます。間に入れる人については慎重に判断する必要があります。
〈話し合いに適したタイミングを見計らう〉
相手の性格や状況等を考えて、協議が可能であると思える場合、冷静に話し合えるときに離婚を切り出すのがよいでしょう。感情がたかぶっていると、思わず離婚を切り出したくなるときもあるかもしれませんが、感情的になっている状況で離婚を切り出しても、話し合いにならなかったり、話ができても本心とは異なるやりとりになる可能性があります。後々、相手の言うことが変わる可能性もあります。
また、財産分与や親権などの重要な事項について、検討し、準備してから、離婚を切り出す必要があります。
離婚は子どもにも影響が及びます。子どもを不安にさせないよう配慮が必要です。子どもにとっては、大切な父であり、大切な母です。子どもの前で、離婚の話し合いをしないよう、また、相手の悪口を言わないように気をつけましょう。
離婚の切り出し方(具体的なステップ)
切り出す場所と時間を選らぶ
〈落ち着いた雰囲気の場所を選ぶ〉
離婚を切り出す際は、冷静に話せる環境、落ち着いた雰囲気の場所がよいでしょう。
自宅での話し合いになることも多いでしょうが、自宅で話し合う際は、子どもが学校に行っている間など、子どものいないところで話し合うことを心がけましょう。
〈時間的な余裕がある時を選ぶ〉
仕事が忙しいときや受験期など子どもにとって重要な時期を避け、時間的な余裕がある時期、比較的落ち着いた時期に話し合うのが良いでしょう。
時間に余裕がないと心にも余裕がなくなり、冷静な話し合いができなくなりますし、感情的な対立が深まり、解決に時間を要する原因になります。
離婚について1日で話し合いができるわけではありません。お互いに考える時間が必要です。相手が薄々離婚を切り出されると感じていたとしても、簡単に決断できることではないでしょうし、思いがけず離婚を伝えられた相手にとっては考える時間が必要です。離婚を迫るような態度ではなく、少しずつ話し合いをするという姿勢で話し合いに臨むのがよいでしょう。
前向きな協議、建設的な話し合いをするには、ストレスを抱えている時期や精神的に不安定な時期を避け、冷静に話し合える状況で話し合うことが大切です。
離婚を切り出す言葉
〈「離婚したい」とストレートに伝える〉
離婚の話し合いをするには、相手に対し、離婚の意思が固いことを伝える必要があります。相手が本気で受け止めないと話し合いは進みません。離婚について、自分に強い意志があることを示すことが必要となりますので、離婚したいという気持ちをストレートに伝えることが必要です。
建設的に話し合いを進めるには、一方的に自分の気持ちを伝えるだけではなく、相手の気持ちを理解しようとする姿勢をもち、相手の気持ちを考えて言葉を選ぶことも大切です。
〈「今の関係がつらい」と気持ちを伝える〉
話し合いで離婚を成立させるには、離婚したい理由を理解してもらうことが大切です。
また、離婚を切り出された相手としては、離婚したい理由を知りたいと思うでしょう。
離婚は相手にとっても重大な決断です。双方が納得できるように話し合うことで合意に至る可能性が高まります。
① 性格や価値観の違いによる場合
性格や価値観の違いを理由とする離婚は、協議や調停では認められますが、通常、法律が定める離婚事由にはあたらないため、裁判では離婚が認められません。
話し合いでの離婚を成立させるには、相手に理解してもらうことが必要となります。相手に理解してもらうためには、性格・価値観の違いをよく話し合ったうえで、互いに譲歩できないことを確認する必要があります。相手には、本質的な点での違いを抱えたまま夫婦生活を続けることはお互いの人生にとって良くないことを理解してもらうことが必要となります。
相手が誠実に話し合いをしようとする場合は、きちんと相手の言い分に耳を傾け、話を聞くことが大切です。そうすることで、お互いに、関係改善の余地の有無を理解できると思います。
② 相手に明らかな原因がある場合
相手が不倫、暴力、精神的虐待、モラハラ等を行っており、明らかに相手に原因がある場合、その事情を伝えるのがよいでしょう。証拠があれば、相手も離婚の話し合いに応じる可能性がありますし、提示する離婚条件を受け入れてくれることもあるでしょう。
話し合いを有利に進めるために、客観的な証拠、有力な証拠を集めてから、離婚を切り出すようにしましょう。
ただ、夫婦での話し合いでは安全が確保できないおそれがある場合、ご自身だけで離婚の話をしないことをおすすめします。基本的には弁護士を介して協議することをおすすめします。
相手の反応への対処法
〈怒りや悲しみに対する心構え〉
自分から離婚を切り出すときは、十分に考えたうえで結論を出している場合が多いでしょう。
他方、離婚を切り出された相手方は、なんとなく予感していて「やっぱりそうか」と受け止める人もいるでしょうが、あなたの気持ちにまったく気づいておらず、突然離婚を切り出されて激しく動揺したり、落ち込んだり、激怒したりして、離婚を切り出されたという事実を冷静に受け止めることが難しい場合が多いでしょう。
スムーズに離婚協議を進めたい場合は、相手が感情的になることを予想し、冷静に話をするとともに、離婚を切り出された相手の気持ちに配慮し、相手を傷つけるような発言をしないなどの配慮が必要です。
〈話し合いを続けるためのポイント〉
離婚の話し合いにおいても、仕事などでの交渉と同じように、話し合いにおける常識や礼儀をもって話をすることが大切です。仕事での話し合いで、感情的になって暴言を吐いたり、失礼な態度をとることはしないでしょう。夫婦間での離婚の話し合いでも同じだと思います。
冷静に話し合うことが大切です。
また、相手の話に耳を傾け、きちんと話を聞くことも大切です。
本人同士では、どうしても感情的になってしまうこともあるでしょう。話し合いを続けるためには、第三者を間に入れて話し合うことも選択肢となります。ただ、親や兄弟などは、身近であるだけに、感情的になってしまうこともあります。親族等に間に入ってもらう場合は、中立な立場を守ってもらうことが大切です。間に入ってもらう人については慎重に検討する必要があります。
関係が悪化し冷静な話し合いが難しい場合、DVがあり身体に危険が及ぶ可能性がある場合は、話し合いを続けるために、弁護士に依頼するのがよいでしょう。
離婚を切り出すうえでの注意点
感情的にならない
相手が理不尽な要求をしたりしても、感情的になったり、暴言を吐いたりしないように注意しましょう。話し合いの際に、暴言や暴力があると、離婚の手続きを進めるうえで不利になる可能性があることに注意し、落ち着いて話し合うようにしましょう。
相手を責めない
離婚の話し合いで、相手を責めることはやめましょう。離婚の原因が相手にある場合、感情的になって、つい相手を責めてしまうこともあるでしょう。相手に明らかな原因がある場合は、心情として、相手を責めてしまうことも理解できます。
ただ、夫婦関係に悩み、離婚を考え、切り出した目的は、離婚を成立させて、新しい人生、自分らしく生きられる人生を送ることにあると思います。
感情的に責められると、相手も感情的な反応をしてしまいます。双方が感情的になると話し合いが進まなくなります。
話し合いでの早期解決を望むのであれば、相手を責めることは避け、辛い思いをしたという気持ちを伝えるに留めるのがよいと思います。
子どものことを考える
離婚は子どもの心身や生活にも影響が及びます。子どもは大人が考えている以上に、大人の気持ちを察し、自分の気持ちを押さえつけて、平気なふりをしています。子どものためにも、子どもの前では、離婚の話し合いをしないよう、また、相手の悪口を言わないよう配慮することを忘れないようにしましょう。子どもにとって、どちらも大切な親であることを心に留めておきましょう。
まとめ
離婚の切り出し方については、相手があることであり、これが正解というものがあるわけではありません。
離婚が大きな決断である以上、相手も感情的になることもあるでしょうし、相手にとっても考える時間が必要でしょう。
離婚の切り出し方に迷っている場合や話し合いを上手く進めることができるか悩んでいる場合は、一人で悩まず専門家に相談することをおすすめします。